JBA

JBA

現地レポート

実力拮抗、その差を分けたのは―― RSS

2017年1月8日 18時36分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

B.LEAGUEになる以前から、何度も対戦したことのある相手である。細かな戦術の違いはあるものの、互いを知り尽くした相手といってもいい。そんな両チームの対戦は、きっと些細な場面でその勝敗を分けた。

男子準決勝、川崎ブレイブサンダースとアルバルク東京との対戦は、78-71で川崎が勝利し、明日の決勝進出を決めた。

勝った川崎の北 卓也コーチが「最後に敷いたゾーンディフェンスが効果的に決まったところがポイントだったと思う」と言えば、敗れた東京の㉔田中 大貴選手も「ゾーンに関しては、あの緊迫した場面でみんなが一つのことをやれる力がまだなく、個々のタフショットで終わってしまいました。一人ひとりが競った状況でも冷静な判断がまだできていませんでした。その差かなと思います」と敗因に挙げている。

「どっちに転ぶか分からないゲームで、ウチは最後にインサイドの要である㉝トロイ・ギレンウォーター選手がファウルアウトをしたのに対して、川崎はインサイドの要である㉒ニック・ファジーカス選手がきっちり仕事をしたところも大きかったと思います(田中選手)」

アルバルク東京㉔田中 大貴選手は23得点を挙げたが、準決勝敗退となった

アルバルク東京㉔田中 大貴選手は23得点を挙げたが、準決勝敗退となった

川崎の北ヘッドコーチ、またA東京の田中選手が挙げた試合の最終盤が、ゲームの勝敗を分けたポイントであることは間違いない。しかし、そこに至るまでにも、些細な、それでいて重要なポイントは、結果論ではあるが、あった。

例えば、川崎⑨栗原 貴宏選手が前半に3本決めた3Pシュート。⑪野本 建吾選手は33秒しかコートに立っていないが、第2ピリオドの最後にオフェンスリバウンドで㉒ニック・ファジーカス選手の得点につなげた。

しかし、最も印象的だったのは、⓪藤井 祐眞選手の3つのスティールだ。
まず、第2ピリオド、A東京の⑮竹内 譲次選手がスローインしたボールに飛びつき、ゴールを決めにいく。続く第3ピリオドには、A東京②ディアンテ・ギャレット選手のパスをカットし、そこから川崎⑫ライアン・スパングラー選手のフリースローが生まれた。
さらに3つ目には、第3ピリオドのラストプレイ、A東京が5点のリードをさらに拡大しようと最後の攻撃に立った場面で、⓪藤井選手は㉔田中選手が持っていたボールをスティールし、レイアップシュートを決めた。それで川崎は5点でなく、3点のビハインドで第4ピリオドを迎えることになったのだ。

その場面について、⓪藤井選手はこう言う。
「最後は(㉔田中)大貴の1対1か、ピック&ロールでくると思っていました。大貴がファンブルしたところを見逃さず、上手く取ることが出来て、残り時間が4秒くらいだったので、レイアップまでいけるなと勢いでいきました」
一方で、その場面を、A東京㉔田中選手は「やってはいけないミスだった」と振り返る。

それらだけが、大きな勝因になったわけではない。
ただ、実力の拮抗するチーム同士が対戦したとき、その差を分けるのは些細なミスだったり、それを見逃さない目と行動力だったりするのだ。

もしも明日、川崎とA東京が再び試合をしたら、結果は違うものになるかもしれない。試合内容も、もちろん異なるだろう。
でも、だからこそ、一発勝負のトーナメントはおもしろい。些細なミスが自らの首を絞め、相手の歓喜を呼ぶ。トーナメントの神も、多聞に及ばず、細部に宿るらしい。

攻守においてチームに勢いをもたらした川崎ブレイブサンダース⓪藤井 祐眞選手

攻守においてチームに勢いをもたらした川崎ブレイブサンダース⓪藤井 祐眞選手

[ 記事URL ]

同級生に“追いつけ、追い越せ” RSS

2017年1月7日 20時54分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「さすがに高校とトップリーグとでは違いますよね」
女子準決勝、JX-ENEOSサンフラワーズに52-72で敗れたトヨタ自動車 アンテロープスの⑦水島 沙紀選手はそう言った。

16-39と大幅なビハインドで迎えた第3ピリオド、⑦水島選手は2本の3Pシュートを沈め、チームに反撃の糸口を与えた。
それは彼女が高校2年生の時、埼玉県で行われた高校総体の決勝戦、愛知・桜花学園高校と東京・東京成徳大学高校の後半とよく似ていた。大きなビハインドを背負っていた桜花学園高校が、⑦水島選手の3Pシュートを皮切りに怒涛の反撃を見せ、逆転で優勝を果たしたのだ。

そのときと同じように「前半、シュートが入らなすぎた(⑦水島選手)」
トヨタは、ハーフタイムで気持ちを切り替えたものの、同じような結果を導き出すことはできなかった。そうして冒頭の言葉を発し、続ける。
「あそこでチームが同じように上がっていければ良かったんですけど、やっぱり(JX-ENEOSは)強いですね」

JX-ENEOSサンフラワーズ⑪岡本 彩也花選手を相手にドライブを仕掛けるトヨタ自動車 アンテロープス⑦水島 沙紀選手(右)

JX-ENEOSサンフラワーズ⑪岡本 彩也花選手を相手にドライブを仕掛けるトヨタ自動車 アンテロープス⑦水島 沙紀選手(右)

あの夏の逆転劇を経験したのは、もちろん⑦水島選手だけではない。対戦相手となったJX-ENEOS⑩渡嘉敷 来夢選手と⑪岡本 彩也花選手もいた。㉑間宮 佑圭選手も敗れた東京成徳大学高校のエースとしてコートに立っていたが、ともあれ⑦水島選手と⑩渡嘉敷選手、⑪岡本選手は桜花学園高校の同級生として3年間を過ごし、歴戦を重ねてきた。

その3人が、7年のときを経て、オールジャパン2017の準決勝でマッチアップした。
「同じ高校でプレイしていた分、少しは意識しましたね。特に岡本はマッチアップの相手でもあるので、絶対にやられないようにと思って、臨みました」

チームのスタイルも違えば、それぞれの役割も異なるだけに、得点でマッチアップの勝敗を図ることはできないが、⑦水島選手が13得点であるのに対して、⑪岡本選手は9得点。数字としては⑦水島選手のほうが勝っている。それでも「やられたくなかったドライブを少しやられすぎたかな」と⑦水島選手は反省する。
マークマンのスイッチで⑩渡嘉敷選手に守られた場面では「どうやって抜こうかって少し考えすぎてしまいました。もっとリラックスして攻めればよかったです」と、やはり同級生を気にしすぎてしまったようだ。

JX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷 来夢選手とマッチアップするシーンも

JX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷来夢選手とマッチアップするシーンも

高校卒業後、教師を目指して東京学芸大学に進学した⑦水島選手は、その4年間を決して後悔しているわけではない。しかしその間、JX-ENEOSの一員としてバスケットボールに打ち込んできた2人との、ある種の差のようなものは感じると言う。
「2人は常勝軍団で大舞台も常に経験しているのに対して、私は(トヨタ自動車に入社して)3年目でようやくチームの土台になれたかなっていうところなので、その経験の差は大きいですよね」

ただ、と水島選手は続ける。
「それは言い訳にできないので、チームとしてスタメンで起用されている分、しっかりプレイで答えを出していきたいです」

個人としては3Pシュートを3本沈めたことよりも、フィールドゴールが8本中1本しか決められなかったことを悔やむ。シューターというポジションではない彼女に求められているのは3Pシュートでなく、ドライブで相手のディフェンス網を崩して得点を挙げるか、アシストを生み出すか、である。
「その意味でもう少し2ポイントの得点がほしかったですね」

常勝軍団に勝つためにはシュートを決めきることはもちろん、⑦水島選手について言えば、ドライブからのシュートバリエーションを増やす必要がある。そのことに改めて気づかされた試合だった。敗れはしたが、常勝軍団の同級生から得たヒントは、Wリーグ2次ラウンド以降、⑦水島選手にとって貴重な財産となりそうだ。

[ 記事URL ]

新成人が思い描く明日(みらい) RSS

2017年1月6日 22時04分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

良いイメージを持たれているのは分かっていた。だからこそ、それを払拭するには出だしが重要になる。その出だしは悪くなかった。しかし、そこからもうひとつ抜け出せない時間帯が続く。打ち破ったのは今年、新成人を迎える富士通 レッドウェーブの2年目、⑤曽我部 奈央選手だった。
女子準々決勝、富士通と三菱電機 コアラーズの一戦は80-65で富士通が勝利し、5年連続となる準決勝進出を決めた。

富士通はオールジャパンの直前、Wリーグの1次ラウンド最終節で三菱電機に連敗を喫している。この試合はそのリベンジマッチでもあった。
序盤から⑫篠原 恵選手のポストプレイ、⓪長岡 萌映子選手の3Pシュートなどでリズムを掴んだが、第2ピリオドに入るとなかなか得点が伸びていかない。三菱電機もミスを重ねていたため、追い上げられたわけではないが、それでもいつ三菱電機のリズムになるか分からない。

そんな膠着状態を打ち破ったのが、⑤曽我部選手の3Pシュートだった。
「リーグの前半戦が終わってからオールジャパンまで、みんなで合計4万本のシュートを決める『4万本チャレンジ』をしてきました。毎日毎日200~300本ずつ入れてきたので、あの場面でもシュートは思い切り打つことができました」

⑤曽我部選手の最大の武器は、自他ともに認めるディフェンスだが、本人も「ディフェンスが良いときはオフェンスも上がってくる」と言うとおり、ディフェンスで強烈なプレッシャーをかけることによって、その3Pシュートを生み出した。
さらにその直後、三菱電機㊺渡邊 亜弥選手のドリブルをスティールし、それを奪い返そうとした渡邊選手のファウルを誘うなど、チームに勢いを与える仕事を短時間でしている。
今日の勝利の陰の立役者と言っていいだろう。

厳しいディフェンスから相手のボールを奪う富士通 レッドウェーブ⑤曽我部 奈央選手(下)

厳しいディフェンスから相手のボールを奪う富士通 レッドウェーブ⑤曽我部 奈央選手(下)

実はリーグ戦で三菱電機に2連敗した、その初戦に⑤曽我部選手は出場していない。ベンチにはいたし、ケガや病気だったわけでもない。ただ、その日の朝の練習であまりにも調子が上がらないために、小滝 道仁ヘッドコーチから起用を見送られてしまったのだ。

あの悔しさは今も忘れていない。
「あんな形で出られなかったから、今朝の練習でも、また『あのときのようになったら、どうしよう?』ってすごく緊張していたんです。でも、そんなこと以上に、今までチームのみんなでハードに練習してきたことがすごく自信につながっているので、今日は自分のできることを、本当に精一杯出そうという気持ちで臨みました」

その結果が持ち味のディフェンスで相手のガード陣を苦しめ、練習を重ねてきた3Pシュートでチームに勢いを与えた、彼女の活躍だったわけである。
「今日の勝利で、あの連敗で失っていたチームの自信は取り戻せたと思います。今までやってきたことがみんなの自信になっていると思うので、明日からはオフェンスもディフェンスも40分間、誰が出ても強い気持ちで戦えると思います」

明日は6年ぶりの決勝戦進出をかけた準決勝である。相手はシャンソン化粧品 シャンソンVマジック。5年前、つまり準優勝した翌年のオールジャパン2012の準々決勝で敗れた相手である。もちろん当時は⑤曽我部選手も富士通の一員ではなかったが、それでも今年こそは決勝戦へという気持ちを、ほかのチームメイトと同じくらい強く持っている。
「自分自身のやることは変わらないので、ガードの⑫三好(南穂)さんを苦しめられるだけ苦しめたいと思います」

気持ちよく成人式を迎えるためにも、成人の日の前日に行われるオールジャパンの決勝戦に立って、笑顔で大会を終えたい。今年、新成人となる⑤曽我部選手は心の中で、そんな明日(みらい)を思い描いている。

笑顔で成人式を迎えるためにも、さらなる奮起を期待したい

笑顔で成人式を迎えるためにも、さらなる奮起を期待したい

[ 記事URL ]