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現地レポート

成長の証は、次への道標 RSS

2017年1月5日 22時51分

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試合後のインタビューゾーン。頭からタオルを被っていた筑波大学⑥馬場 雄大選手は、記者の呼びかけを手で制して、ロッカールームへと下がっていった。それほど悔しく、今すぐには質問に答えられる状態ではなかったのだろう。

大学1位の筑波大学がB.LEAGUE4位のアルバルク東京に74-86で敗れた。

約10分後、インタビューゾーンに戻ってきた⑥馬場選手が第一声、「アルバルクさんは自分たちを格下に見ていたと思いますが、それを叩いてやれなかったのが、本当に悔しい」
そう口にした言葉は次第に震えていった。
彼らは本気だったのだ――本気でBリーグのチームを倒しに挑んだのである。

74-86で敗れ、オールジャパンのコートを去る筑波大学⑥馬場 雄大選手

74-86で敗れ、オールジャパンのコートを去る筑波大学⑥馬場 雄大選手

今年はインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)を3連覇しただけでなく、春の関東大学トーナメントを57年ぶりに、秋の関東大学リーグ戦も14年ぶりに制して、“大学3冠”を達成した。
そこには「昨年のオールジャパンでアイシンさん(現:シーホース三河)と対戦させてもらって、個々が大学を見ていちゃダメだと、目標を『B.LEAGUEを倒す』に設定した」ことが、大きく影響している。

今日の試合でも、中盤以降、思ったように得点差が開かず、フラストレーションからか、徐々に敵意をむき出しにしてくるアルバルク東京の選手たちに対しても、彼らは一歩も引かなかった。㊻生原 秀将選手はアルバルク東京の⑧二ノ宮 康平選手のファウルに対して、立ち向かっていく姿勢を見せたほどだ。それらはすべて気持ちの問題だと、⑥馬場選手は言う。

「昨年は甘い気持ち――どうせ勝てないだろうという気持ちで試合をしていました。今年は観ているお客さんに、そんな情けないプレイは見せなくなくて、絶対に俺たちが一番だとコート上で示そうとしていました。自分自身にとっても、どれだけできるかというチャレンジでもあったし、怯んだら自分の力を試せずに終わってしまうので、そういう姿勢は見せないようにしました」

プロ以上にプロ意識を持った、大学生である。
だからこそ、プロチームであるアルバルク東京と互角か、それ以上の試合を展開することができたのだ。

筑波大学の選手たちは、最後まで怯まずに戦い続けた

筑波大学の選手たちは、最後まで怯まずに戦い続けた

もちろん、それは㊻生原選手や②満田丈太郎選手など、チームをけん引する4年生がいたからこそ、でもある。試合直後のインタビューゾーンで⑥馬場選手が立ち止まれなかったのは、目標であるB.LEAGUEのチームを倒せなかったこともあるが、彼ら4年生と一緒にプレイする最後の試合にしてしまったこともあると打ち明けている。

「最後は生原さんが僕たちに経験を積ませようとして、パスを回してくれて、好きなようにやらせてくれました……。そうした、今まで積み重ねてきた先輩たちの力があるからこそ、自分たちがコートに立てていることは絶対に忘れてはいけないと思っています。それは自分が最上級生になる来年度、後輩たちに伝えていきたいことです」

そう話す⑥馬場選手は現在3年生。もう1年、Bリーグを倒すチャンスがある。盟友⑰杉浦 佑成選手もおり、その他のポジションにも実力者は揃っている。
「この1年、Bリーグを倒すためにやってきたことは間違いじゃなかったと証明できたと思います。しかしアルバルクさんの方が一枚も二枚も上手で、決めるべきところを決めるなど、詰めがしっかりしていました。自分たちはそれが見えるところまできたので、あと1年、足りなかったところを詰めていくだけですね」

厳しい1年になるだろう。他大学に追いかけられながら、自分たちは日常的には対戦することのできない、いわゆる“見えない相手”を追わなければいけないのだ。それでもこの“12点差”を忘れなければ、⑥馬場選手も筑波大学も、今大会以上にたくましくなる。
相手は違うけれども、前回大会の52点差から40点も縮めた“12点差”は、筑波大学の成長の証であり、これから1年の道標でもある。

海外に目を向けるなど、高い意識を持つ⑥馬場選手は日本代表候補の重点強化選手でもある

海外に目を向けるなど、高い意識を持つ⑥馬場選手は日本代表候補の重点強化選手でもある

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