ラストメッセージ RSS
2017年1月4日 20時17分
トーナメント形式の大会では勢いのあるチームが勝つんです――かつて皇后杯を下賜された選手がそう言っていた。しかし勢いだけで、大学生がWJBL勢を2試合連続で破ることはできなかった。
前日、羽田ヴィッキーズ(WJBL9位)に勝利した筑波大学はアイシン・エイ・ダブリュ ウィングスに62-90で敗れ、3回戦でオールジャパン2017の幕を下ろした。
「大学の先輩でもある⑫白 慶花選手をはじめとして、高さで圧倒的に負けているので、その差は大きかったと思います」
筑波大学のセンター、⑦中川 凪選手は羽田戦との差をそう振り返る。
序盤こそ、相手の隙を突いて果敢にリバウンドへ飛び込み、奪うこともできていたが、徐々にアイシンAWがリバウンドを支配し始める。それと同時に点差もじりじりと離されていく。そうした修正力もトップリーグのチームならではなのかもしれない。
それでも日本代表候補でもあるアイシンAWの①馬瓜 エブリン選手とマッチアップすることの多かった⑦中川選手は、「気持ちだけは負けないように臨みましたし、最後まで攻める気持ちでプレイできたと思います」と胸を張る。
中川選手は兵庫県立鳴尾高校出身。高校総体、国民体育大会、ウインターカップといった高校の全国大会にはまったく無縁の選手だった。しかも身長は169cmしかない。センターと呼ぶには小さすぎる。
それでも彼女は「もうひとつ上のステージでバスケットをやってみたい」と、ウインターカップの兵庫県予選後から受験勉強を始め、一般入試で筑波大学に入学した。女子バスケットボール部に入ると、周りはすべてではないものの、全国で名だたる学校から推薦で入学してきた、いわゆるスター選手たちが多く揃う。技術だけでなく、サイズでも自分を越える選手が次から次へと入ってくるのだ。
しかし⑦中川選手は諦めなかった。
「とにかく4年間、自分が生きられる道を、ひたすら探していました」
身長など持って生まれた差には、いかにそれを出し抜くかを考えたし、「シュート力は推薦組のほうが圧倒的にある」と見極めるや、そのシュート力を生かすためのスクリーンやリバウンドなど、自分の頑張り次第でどうにかなる部分を磨き続けた。チームにペイントエリア内で体を張る選手がいなければ、サイズは小さいけれども自分が体を張ろうと開き直りもした。そうして⑦中川選手は、今シーズンの筑波大学には欠かせない、不動のセンターとしてスタメンに抜擢されたのである。
「活躍して、スポットライトを浴びるのは力のある後輩たち。でも私はその子たちが生きればいいと思ったし、チームが勝てればいいと思ったんです。とにかくチームに貢献できる、自分のやり方を4年間追求できたのかなと思います」
結果として、自分たちの代でインカレを制することはできず、今大会でも目標としていたJX-ENEOSサンフラワーズとの対戦まで勝ち進めることはできなかった。しかし⑦中川選手はスッキリした表情でゲームを終えていた。
「毎年、筑波大学には一般入試で入ってくる選手が何人かいるので、その子たちにもチャンスがあることを伝えられたらいいなって思います。やはり一般生と推薦生が一つにならないと絶対に勝てないと思うので、だからこそ、一般生でもできることが必ずあると思ってくれたら、幸いです」
169cmでインサイドを守った⑦中川選手のラストメッセージが、筑波大学の、それだけでなく推薦生を多く抱える大学の一般生たちにどう響くだろうか――。
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