ジェット気流に乗って RSS
2017年1月9日 23時21分
「機を見るに敏」とは、好機を見極め、的確に行動するという意味である。オールジャパンでの千葉ジェッツを表すのに適した言葉だ。
男子決勝戦、千葉ジェッツは川崎ブレイブサンダースを88-66で下し、初の天皇杯を下賜された。
千葉ジェッツは、準々決勝で栃木ブレックス(B.LEAGUE2位)、準決勝でシーホース三河(同3位)、そして決勝の川崎ブレイブサンダース(同1位)と、B.LEAGUEの上位3クラブを破っての完全優勝。しかも、常勝チームの相手に“らしさ”を出させず、自分たちは“らしさ”を出し切ったのだ。
「ハードにディフェンスし、リバウンドを取り、速攻を出す。そんなジェッツらしさを出せた勝利だった」
千葉ジェッツのキャプテン㉞小野 龍猛選手は、決勝戦をそう振り返る。
もちろん、どのチームも常に自分たち“らしさ”を出そうと準備し、試合に臨んでいる。しかし、それが出せるか否かの差は、選手全員が常に意識を統一できるかどうかにある。千葉ジェッツがそれをできたのは、連勝で得た自信と、その後の連敗の悔しさにある。
「(リーグ戦で)13連勝したあたりから、チーム全員で『第1ピリオドからハードなディフェンスをしよう』と意識できるようになりました。しかし、年末の川崎戦ではそれができずに連敗してしまったので、第1ピリオドでやられることをなくそうと挑んだ今大会でした。今大会では、全員がウォーミングアップのときからそれを意識していたことが大きいと思います(小野選手)」
リーグ戦で見出したクラブの共通認識を、大会直前のゲームで一度は見失ったものの、その経験で再認識ができたことで、オールジャパンで最高の結果となった。
もちろん、40分間のゲームの中には、好機もあれば、その逆の危機もある。
しかし本当に苦しくなる前に、㉞小野選手は素早くその芽を断ち切った。第2ピリオドで得点の止まっていた川崎ブレイブサンダースが㉕ジュフ 磨々道選手のフリースローで得点を動かした直後、また第3ピリオドに⑭辻 直人選手がこの試合1本目の3Pシュートを沈めた直後に、㉞小野選手が3Pシュートを決め返している。どちらも川崎に流れが傾く可能性のあるプレイだっただけに、その2本の3Pシュートが持つ意味は大きい。
そうした危機管理能力、状況判断は、昨年の日本代表活動での経験が生きていると㉞小野選手は言う。
「数少ないチャンスで攻めることや、状況をよく見ることは日本代表で考えさせられたことですから」
昨年7月、セルビア・ベオグラードで行われたFIBAオリンピック世界最終予選で、「チームワークもそうだけど、“個”の力が足りない」と感じた㉞小野選手は、帰国後、悪い状況を個人でどう打開すべきかを考え、そのための練習を重ねてきた。
それが決勝戦、チームが危機に陥る前に、状況を確認し、どのプレイが有効なのかを選択、正確なシュートで打開したのである。
チームで好機を逃さず、危機には気づいた個が早めにその芽を摘んでいく。
勝つためには当然のことかもしれないが、決して簡単なことではない。しかも、それを初戦の新潟アルビレックスBB戦から4試合続けてできたことは、もはや単なる“勢い”ではない。彼らの実力である。
今大会のキャッチフレーズは「歴史と共に、新時代を築く。」である。
クラブ創設初の栄冠に輝いた千葉ジェッツは、歴史こそ浅いものの、日本のバスケットボール新時代を築いた。
オールジャパン初制覇というジェット気流に乗って、千葉ジェッツはさらなる成長を目指す。
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