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現地レポート

熱い新入社員がやってきた RSS

2017年1月3日 21時09分

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さまざまなカテゴリーが、その枠を超えてゲームを行うのがオールジャパンだが、時として、初戦で同じカテゴリーのチーム同士が対戦することもある。
男子1回戦、四国ブロックから推薦された四国電力と、北海道ブロックから推薦された宮田自動車は、実業団連盟に所属するチーム同士の対戦となった。

ウインターカップと併せ、冬の2大大会では、学生の軽やかさや爽快さがそこかしこに見受けられていたが、社会人同士となると、バスケットボールの完成形が見えてきているがゆえ、フレッシュさというよりは重たい空気がコートを覆ってしまう。
それはそうだろう。彼らはバスケットボール選手であると同時に、企業戦士でもあるのだ。始業時間から終業時間まで働き続け、残業ともなれば「練習があるから帰ります」と簡単に口にはできないのだ。

丸亀市立東中学校で全中大会に出場し、尽誠学園高校ではNCAAで活躍する渡邊 雄太選手(ジョージ・ワシントン大学 3年)らとともにウインターカップ準優勝、その後、青山学院大学ではインカレファイナルを経験している、四国電力の⑬笠井 康平選手が言う。
「仕事の忙しい方は日曜日だけしか練習ができていません。試合に出ている方は週3回くらい動けていますが、やはり大学時代とは比べ物になりません」

笠井選手自身はまだ社会人1年目ということもあり、仕事量もさほど多くなく、週4~5回の練習に毎回参加できているそうだが、それでもウェイトトレーニングなどは土日にしかできないと言う。
「ただ仕事内容が経理なので、基本的にデスクワークで、体のキレは確実に落ちています」
足のケガもあって、宮田自動車との試合では、本来のアグレッシブなディフェンスは鳴りを潜めたが、それでも随所にこれまでの経験を生かした激しいプレイで、チームを68-51の勝利に導いた。

普段は経理として数字と格闘するが、コートでは熱くゴールに向かう四国電力⑬笠井 康平選手(右)

普段は経理として数字と格闘するが、コートでは熱くゴールに向かう四国電力⑬笠井 康平選手(右)

笠井選手は、経歴を見てもわかるように、これまで各カテゴリーでトップレベルで活躍してきた選手である。
社会人バスケに物足りなさがないと言えば、ウソになるだろう。どこかで、トップレベル、つまりは昨年9月に開幕したB.LEAGUEでプレイしたいという気持ちがなかったわけでもないだろう。
それでも自ら選んだ就職先である。今は「四国電力というチームで、全国で戦えるようになりたい」と断言する。

「やりがいはすごく感じているんです。というのも、みなさん“聞く耳”を持ってくださっていて、僕の言ったことに対して応えてくれようとするんです。それが少しずつ結果にも表れてきています。これまで四国電力として、何十年と勝てていなかった国民体育大会でベスト16まで勝ち進められましたし、このオールジャパンでも、今日、四国電力史上初の初勝利を飾ることができました。それでみなさんの喜ぶ顔を見たら、自分ももっとみんなのことを思って、頑張ろうと思えるんです」

大学時代には苦しい時期もあったが、その先の新たな出会いで⑬笠井選手は自らを取り戻していった。“熱い男、笠井康平”の復活である。

オールジャパン2017でチーム史上初の勝利を挙げた四国電力

オールジャパン2017でチーム史上初の勝利を挙げた四国電力

大学の先輩や他大学の同期のなかには、既にB.LEAGUEで活躍している選手もいる。そんな彼らを羨望の目で見つめながらも、⑬笠井選手は今のチームメイトたちに彼らと同じものを感じている。
「時間のない中で、バスケットボールにかける熱や努力は変わりありません。カテゴリーが下に位置する分、技術の差は感じますが、逆に言えばそれだけです。熱い気持ちはみんなが持っているので、そういうみなさんの期待に応えたいなって思うんです」

2回戦の相手は社会人1位のリンタツだが、そこを越えることができれば、B.LEAGUE 2位の栃木ブレックスとの対戦が待っている。
「(大敗して)バスケットが嫌いになっちゃうかもしれないけど……」と、⑬笠井選手は笑いながら、そう言って、はっきりと告げる。
「やってみたいですね」
笑顔の目の奥では熱い炎が揺れていた。

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