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現地レポート

優しさが阻んだ下剋上 RSS

2017年1月2日 17時25分

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経験が大きな武器となるバスケットボールにおいて、カテゴリーを越えた試合は、下位に位置するチームの“下剋上”が魅力のひとつとなる。一方で上位のチームにとっては、“負けられない”という重たい足かせにもなりうる。

大学4位の早稲田大学が、WJBL11位の新潟アルビレックスBBラビッツに挑んだ。カテゴリー別に見れば、早稲田大が下位、新潟が上位という位置づけになるが、試合は早稲田大が優勢に進めていく。しかし第4ピリオド、トップリーグの意地を見せて逆転に成功した新潟に、早稲田大は次の一歩を出し切れず、72-77で敗れた。

チームトップの18得点を挙げた早稲田大のエースであり、キャプテンの㉒田村 未来選手は、「勝てた試合だったのに落としてしまって……インカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)でも悔しい思いをしたのに、また同じことになってしまいました」と涙をこぼす。

チームトップの18得点を挙げた早稲田大学㉒田村 未来選手

チームトップの18得点を挙げた早稲田大学㉒田村 未来選手

学生らしいフレッシュなスピードと、攻守に切り替えの速さで新潟に勝負を仕掛けた。新潟のディフェンスが決してプレッシャーを強くかけてくるタイプではないことも、学生らしい思い切りの良さを出せるポイントになると踏んでいた。

早稲田大のスカウティング通りに試合は進んでいたが、唯一の誤算はセンター陣がケガのために十分な練習を積めなかったことと、スタメン出場していたチーム最高身長(181cm)でセンターの㉝中田 珠未選手が第2ピリオドに負傷退場し、以降、試合に戻れなかったことだろう。前半こそ、インサイドで互角以上の戦いができていたが、後半、インサイド陣の動きに陰りが見え始める。

それでも、インカレで㉒田村選手が得点を取れないときに、ほかの選手のそれも伸びていかないことを露呈し、以降、オールジャパン2017に向けて個々のレベルアップを図ってきた。その成果は十分に出して、最後まで粘り抜いた。
「1年間、自分たちに足りないところを本当に考えたし、みんなでチームを作ってきました。それでもどこかが足りなくて……」

その足りなかった“どこか”を聞くと、㉒田村選手は少し考えて、悔しそうに、しかし言葉を見つけた瞬間、少し笑顔になって答えた。
「野心がないのかな……本当に優しい人ばかりなんです。ビックリするくらい優しい人たちばかりで、それは私生活ではいいことなんですけど、試合ではどこかに遠慮につながっているのかなと思います」

酸いも甘いも、表も裏も知り合ったチームメイトたち。その絆が切れることはない。だからこそ、このチームで上のカテゴリーのチームを倒して、行けるところまで行きたかったのだが、人としての優しさが、最後の最後で下剋上を取り逃がす要因になってしまった。

逃がした魚は大きい。しかしこの経験は必ず次のステージで生きてくる。
早稲田大にとっては、来年度以降に生かすべき多くの課題を見つかり、卒業後の進路をWリーグのチームに決めている㉒田村選手にとっても、学生同士では得られない大きな経験を手に入れたに違いない――強者を倒すためには野心を持って、40分間常に攻撃的でなければいけない。

田村選手ら4年生は、学生最後のゲームでまた一つ貴重な経験を積んだ

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